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ライムライト・ネットワークスの テクノロジースタックを掘り下げる

 

Bizety.comから許可を得て掲載

昨年、ライムライト・ネットワークスは自社のグローバルネットワークを拡張し、効率性を高めるために取り組みました。
実際にライムライトはサーバーキャパシティを50%、ネットワークキャパシティを39%増加させ、インドだけで3箇所、全世界で12箇所の大規模配信拠点(PoP: Point of Presence)を開設し、エッジでのセキュリティ機能(WAFおよび対DDoS攻撃)を強化し、配信のエネルギー効率(ワットあたりのMbps)を600%以上改善し、個々のサーバーのネットワークキャパシティを数百%強化して、各サーバーからの配信能力をNetflixに迫る100Gbps級に増加させました。

しかしこれらには、ライムライトが持っている最もクールな機能は含まれていません。それは、最近導入された機械学習によるキャパシティ管理システムで、何週間も前から配信を最適化することができます。機械学習を使ったこのユニークなアプリケーションは、プラットフォーム全体での配信の品質と効率の向上という形で、最適化に信じられないほどの効果をもたらしました。

しかし、競争上の観点からみると、これらは例えばAkamaiのような他の事業者にもできないわけではありません。そこで次のような疑問が投げかけられます。「Akamaiを含む他社にできないことで、ライムライトにだけできることは何か?」それに答える前に、明らかな事実から始めましょう。Akamaiは偉大な会社であり、過去2年間で彼らが行ったビジネスモデルの変革は、まさに革新的と言えるものです。この 2年間で、彼らのセキュリティ関連の売上げは、メディア配信による売上げを上回った可能性があります。全体的に見て、Akamaiは適切な買収を行い、時代を先取りする適切な製品を開発してきました。一方でライムライト・ネットワークスが明らかに突出しているのは、そのプライベートネットワークです。実際、自社でネットワークを保有して純粋なCDNを提供している企業は他にはありません。2018年はプライベートネットワークがBGPオーバーレイネットワークに打ち勝ち、グーグルやフェイスブックなどのビッグプレイヤーがこの分野に参入してくるでしょう。

Akamaiは(他のいくつかのCDNと同様に)、BGPオーバーレイネットワークと呼ばれるソフトウェア技術を開発しました。AkamaiのオーバーレイネットワークはSurerouteと呼ばれています。Surerouteは、エッジサーバーからオリジンサーバーへ送られるトラフィックを細かく制御することで、従来からあるBGPネットワークを補完します。BGPは、異なるネットワーク同士を接続する技術です。BGPオーバレイネットワークの最大の問題は、コンテンツがエッジにキャッシュされていない場合に、そのリクエストがパブリックネットワーク上を移動しなければならないということです。Akamaiのサーバーは高度に分散しており、それがエッジでのキャッシュヒット率の低下をもたらしているため、トラフィックを最適化する能力は彼らにとっては非常に重要です。実際、AkamaiのLeightonは、今年のEdgeカンファレンスでの議論で、ボトルネックはラストマイルでは無く、インターネットの「中核」にあると言っています。

プライベートネットワークの場合には、挙動が異なります。要求されたコンテンツがキャッシュにない場合、リクエストは、パブリックネットワークではなく、プライベートネットワーク上を移動します。Akamaiが指摘したインターネットの「中核」を完全にバイパスします。サービスプロバイダは、プライベートネットワークを保有することにより、完全な制御を行う事ができます。このように、プライベートネットワークはBGPオーバーレイネットワークよりも優れているのです。ライムライト・ネットワークスの場合、そのユニークなプライベートネットワークには、リースされたダークファイバーとDWDMハードウェアを含んでいます。

このように、CDNにはパブリックネットワーク対プライベートネットワークという2つの陣営があります。各陣営は、自らのネットワークが最善であると考えています。しかし我々は、オリジンとCDNエッジを結ぶようなプライベートネットワークは、今後益々一般的になると考えています。既にGoogle Espresso、Facebook Open/R、Aryaka NetworksおよびDropboxのようなインターネットの巨人がこの分野に参入しています。

ライムライトのアーキテクチャ

私たちは最近、ライムライトのアーキテクチャ担当VPであるJason Hofmannに詳細なインタビューを行い、CDNが取り組んでいる様々な課題について興味深い話を聞くことができました。その中には、コンテンツ配信におけるプライベートバックボーンの優位性やロードバランシングの新しいアプローチ、そのための機械学習の導入などが含まれました。

Jasonは、ライムライトが2001年にネットワークについての豊富な専門知識を持つ初期のダイヤルアップISPのパイオニア達によって設立されたという事実を指摘し、早い時期にグローバルなプライベートバックボーンを構築することを決定したことの先見性について説明しました。他のベンダーがウェブサイト上の画像のためにCDNを構築したのに対し、ライムライトはまだ存在していなかったユースケースのためのCDNを構築したのです。それは、ライブおよびオンデマンドのビデオ配信や、様々なデバイス向けのゲームやアップデートなどの大規模なソフトウェアのダウンロードといった巨大な帯域を消費するユースケースを指します。

 

 

ライムライトのプライベートバックボーン

ライムライトは創業時から、彼らがSuper PoPと呼ぶ、高いコンピューティングおよびストレージパワーを持つ大規模配信拠点(PoP)を高密度に配置したアーキテクチャを採用しています。サーバーをキャリアに近づけるのではなく「キャリアをサーバーの近くに持って来る」という考え方を持っており、それらのPoPを独自のプライベートファイバーバックボーンにより相互に接続しているのです。これは、キャリアのネットワーク内にサーバーを設置している場合には不可能なことです。これはまた、ハードウェアの選択が自由にできることも意味しており、大量のキャッシュを持った高密度なアーキテクチャを実現し、独自のIP空間を利用でき、ハードウェアの更新も頻繁に行えます。この点がAkamaiとは異なり、ライムライトのCDNがほぼ100%SSDベースになっている大きな理由です。

ライムライトは、すべてのPoPを相互接続し、16年をかけて大規模なバックボーンを構築しました。そのバックボーンは地球全体を双方向にカバーしています。他のCDNのように、ヨーロッパとアジアを繋ぐためにアメリカを経由してルーティングする必要はありません。今になってバックボーンを構築しようとしている何社かのCDNベンダーでは、「バックボーン」は大陸を相互に結ぶのでは無く、北アメリカを中心に構築されています。ライムライトでは、西と東の接続を冗長化できます。

ライムライトの高密度なSuper PoPは、プラベートなファイバーバックボーンによって相互に接続されており、混雑するパブリックインターネットをバイパスすることで、重要なキャッシュフィルのトラフィックを高速化できます。キャッシュミスによるオリジンへのトラフィックを信頼性の高いものにしたいのであれば、独自のバックボーンが有効です。いったんキャッシュミスが起こると、その影響は増幅されて行き、その地域のユーザー全員に影響を及ぼしてしまいます。

インターネットはパブリックネットワークであり、あなたの「荷物」を配送するためのルートはひとつしか用意されません。AkamaiのSureRouteのようなアルゴリズムを使った最適化においては、毎回異なったAkamaiサーバーがテストコンテンツを定期的にオリジンにリクエストし、その結果を元にBGPが最適なルートを決定します。このアルゴリズムは、例えば最初に任意の迂回路を選んだ場合に、そのポイントから公共のインターネットを経由してコンテンツをより速く取得できるかどうかを検討します。しかしプライベートネットワークでは、自分で効率的なルーティングを決めることができ、今のルートが気に入らなかったり、「道」が混雑していれば、新しい「道」を作ることが可能です。

Hoffmannは下記のように述べます。「グローバルバックボーンをうまく構築して運用できれば、コンテンツを得るために複雑なアルゴリズムは必要ありません。他社のCDNはコントロールができないインターネットを使うためにアルゴリズムを必要としていますが、最高のレイテンシと可用性を同時に、しかも継続的に得るのは不可能です。そこには本質的にトレードオフが存在します。真のプライベートネットワークを持つライムライトは、最高のレイテンシと可用性を同時に、常に提供できます。どちらか一方、という問題ではありません。」Hoffmanはさらに、「4Kビデオ、仮想現実(VR)、4Kビデオゲームなど、コンテンツは巨大化し、ビットレートも上がっています。全世界を包み込むプライベートバックボーンと高密度のSuper PoPアーキテクチャは、混雑し『SLAの無い』パブリックインターネットに頼る低密度なアーキテクチャよりも優れていることが証明されています。」

キャッシングにおけるライムライトと機械学習

機械学習によるキャパシティ管理システムは、ライムライトのアーキテクチャチームによって構築されました。これは、常に配信品質と効率を高めていこうというライムライトの社をあげてのイニシャティブの成果(業界最高レベルのリバッファ率など)です。

通常のサーバーでは、1台のサーバーが過負荷状態に陥ると他のサーバーが処理を代わりますが、その際に大きなペナルティは発生しません。Hoffmannによると、キャッシュサーバーはこれら他のサーバーとは異なるのだそうです。キャッシュサーバーのクラスタにおいては、1台のサーバーから他のサーバーにリクエストを振り替えることは、キャッシュヒットのトラフィックをキャッシュミスに変えることになるのです。

サーバーAからBにトラフィックを切り替えたとき、B(その前にそのコンテンツにアクセスしたことが無いサーバー)はコンテンツを取得しに行かなければなりません。もしこの従来型のアプローチを単純に繰り返すのであれば、Hoffmannによると、オリジンサーバーへのトラフィックが急増し、パフォーマンス問題が起こります。新しいサーバーに「一時的に」切り替える度に、キャッシュヒット率は低下し、配信品質と効率性を悪化させます。

ライムライトは、「将来に備える」ために機械学習を使用しています。ライムライトの機械学習によるキャパシティ管理システムは、顧客のライブラリをセグメント化するための前向きなアルゴリズムです。

このような運用を行なっているCDNベンダーは他にありません。

このシステムにより、ライムライトはのキャパシティは最大化し、「ホットスポット」に起因するサービス問題がほぼ解消されました。その結果、最もパフォーマンスに敏感な顧客は、よりライムライトを頼るようになりました。

結論

要約すると、専用のプライベートネットワークおよびキャッシュフィルトラフィックのためにそれを活用するために設計されたCDNアーキテクチャは、CDNのビジネスモデルにおけるゲームチェンジャーであり、ライムライトと競合ベンダーを差別化するポイントとなります。インターネットの「中核」に存在する問題を回避するために複雑なソフトウェアを開発するのではなく、ライムライトは成熟したグローバルなプライベートバックボーンでこれらの問題を回避し、R&Dに注力して機械学習によるキャパシティ管理システムのような画期的な技術革新を実現しました。

また、専用のプライベートバックボーンはBGPオーバーレイネットワークよりも優れているだけでなく、クライアントレスVPN、ネットワークセキュリティ、SD-WAN、およびどの他の新製品を開発するための基礎としても大いに役立つはずです。そしてライムライト・ネットワークスもそれを狙っているはずです。

Source By: Ernie Regalado, Bizety Technologies, LLC.

本記事は英語版の抄訳です